狭い道で駐車中の車の横をすり抜けようとして、ハンドルやペダルがドアをこすってしまった。駐輪場から自転車を出すときに、隣の車のバンパーに当ててしまった。持ち主が近くにいなくても、そのまま立ち去らず、安全を確保して警察に連絡してください。道路で自転車の運転中に車を傷つけた場合は、けが人がいなくても交通事故として報告が必要です。駐車場などで法律の適用が分からない場合も、場所と状況を警察に伝えましょう。弁償の約束は、保険の契約先に連絡してからにしてください。
小さな傷でも報告が必要な理由と、警察に伝えること、弁償までの順番を説明します。電動アシスト自転車も自転車なので、同じ扱いです。
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転倒などメーカー保証の対象にならない故障の修理や、通販で購入した自転車の点検の受け方を、よくある質問で案内しています。
自転車を止めて周囲の安全を確保し、警察と保険会社に連絡する
駐車中の車に自転車が当たったと気づいたら、まず自転車を止め、次の3つを順に進めてください。どれも、持ち主がその場にいるかどうかに関係なく必要な対応です。
- 自転車を安全な場所に寄せ、道路に破片などが散らばっていれば、安全にできる範囲で通行の危険を防ぐ。片付けが危険な場合は無理をせず、警察へその状況を伝える
- 110番または最寄りの警察署に連絡し、当てた日時・場所と、車のどこにどの程度の傷をつけたかを伝える
- 弁償の約束をする前に、加入している自転車保険や個人賠償責任特約の契約先に事故を連絡する
警察への報告は、道路交通法第72条第1項の後段で運転者に課された義務です。弁償の相談は、そのあとに保険の契約先と進めます。順番を逆にして、持ち主と先に金額を決めてしまうと、後で保険が使えなくなるおそれがあります。
立場が反対で、自分の自転車が車にぶつけられ、相手がそのまま立ち去った場合の届け出と補償は、別の記事で扱っています。
車に当てただけでも自転車の交通事故になる
「交通事故」は、「車両等の交通による人の死傷若しくは物の損壊」をいいます(道路交通法第67条第2項)。けが人がいなくても、車両等の交通によって物を壊した事故が含まれます。自転車は軽車両で、軽車両は「車両」に含まれます(同法第2条)。そのため、自転車で駐車中の車をへこませたり塗装を削ったりした場合も、交通事故として扱われます。
自転車による事故も道路交通法の交通事故にあたり、警察への報告が必要です。事故の状況によっては、刑事上・民事上の責任も生じます。「自転車だから」「相手の車が止まっていたから」という理由で、報告が不要になるわけではありません。
事故全般の予防策や、けが人がいる事故の直後の動き方は「電動自転車の事故を防ぐには?」で解説しています。
持ち主が近くにいなくても警察に報告が必要
交通事故を起こした運転者は、現場に警察官がいればその警察官に、いなければ直ちに最寄りの警察署(交番・駐在所を含む)の警察官に報告しなければなりません(第72条第1項後段)。報告の相手は警察官であり、車の持ち主ではありません。
ワイパーに連絡先のメモを挟んだり、近くの店に伝言を頼んだりするだけでは、警察への報告にはなりません。持ち主への連絡とは別に、警察へ連絡してください。持ち主を待っても現れない場合や、夜間で人通りがない場合も同じです。
コンビニやスーパー、マンションの駐車場など、公道ではない場所でも、自分で「道路ではないから報告は要らない」と決めずに警察へ連絡しましょう。道路交通法の「道路」には、一般交通の用に供する場所も含まれます。該当するかはその場所の利用実態などによるため、場所と事故の状況を警察に伝えてください。駐車場の管理者にも連絡すると、持ち主を探す手掛かりになります。
警察には日時・場所と傷の位置・大きさを伝える
警察に報告する内容は、道路交通法72条1項に定められています。次の表を参考に、分かる範囲で伝えてください。すべてを調べたりメモを完成させたりするために、警察への連絡を遅らせる必要はありません。
| 条文の項目 | 駐車中の車に傷をつけた場合に伝えること |
|---|---|
| 発生した日時と場所 | 何時ごろ、どの道路・駐車場の、どの車の横か |
| 死傷者の数と負傷の程度 | けが人の有無と、自分が転んで打った所など、分かる範囲のけがの状況 |
| 損壊した物と損壊の程度 | 車の色・車種・ナンバーと、傷やへこみの位置・大きさ |
| 積載物 | かごや荷台に積んでいた荷物(荷物が当たった場合はその物) |
| 講じた措置 | 自転車を寄せた、落ちた部品を片付けた、などその場でしたこと |
報告を受けた警察署の警察官は、必要があると認めるときは、警察官が着くまで現場を離れないよう命じることができます(第72条第2項)。その場で待つよう言われたら、指示に従いましょう。この命令に従わなかった場合は、5万円以下の罰金の対象です(第120条第1項第11号)。
報告せずに立ち去ると拘禁刑や罰金の対象になる
持ち主がいないからと警察に報告せずに立ち去ると、第72条第1項後段の報告義務に違反します。罰則は「三月以下の拘禁刑又は五万円以下の罰金」です(第119条第1項第17号)。自転車の事故で警察に報告しなかった場合は「事故不申告」として、同じ刑が科されます(警察庁 自転車ルールブック 令和7年9月 p.50)。
運転者には報告のほかに、運転を止め、道路の危険を防止するなど必要な措置をとる義務もあります(道路交通法72条1項前段)。この義務への違反には、117条の5第1項1号により、1年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金が定められています。割れた部品などが道路に散らばった場合は、安全にできる範囲で危険を防ぎ、警察へ状況を伝えてください。
事故に気づいたら、運転を止め、けが人の救護や道路上の危険防止など必要な措置をとり、警察へ報告してください。停止と連絡だけで終えず、現場の状況に応じた対応が必要です。
弁償の金額をその場で約束しない
不注意で他人の車を傷つけて損害を生じさせた場合は、民法709条に基づく賠償責任を負います。ただし、いくら、どのように支払うかを、その場や持ち主との最初の電話で決める必要はありません。傷の状態や修理の見積もりを確かめ、加入している保険の契約先に相談しながら進めましょう。
他人の物を壊したときに、保険会社に断りなく被害者と約束を取り交わすと、保険金が支払われない場合があります。事故を起こしたら保険会社に連絡し、保険会社の了承なしに話を進めないようにしてください(日本損害保険協会「個人賠償責任保険」)。
持ち主と連絡が取れたら、まず謝罪し、自分の氏名と連絡先、保険に加入していれば契約先に連絡済みであることを伝えましょう。修理代の見積もりや支払い方法の話は、保険の契約先の案内を受けてから進めます。「全額すぐ払います」と言ってしまう前に、契約先へ確かめてください。
使える個人賠償責任保険を家族の契約からも探す
自転車事故で他人の物を壊したときの賠償に備える保険には、個人賠償責任保険があります。自転車には、自動車の自賠責保険に相当する強制保険はありません。自分で契約した保険だけでなく、家族の保険などに、自分の損害賠償責任を補償する契約が含まれていないかを確かめましょう。
個人賠償責任保険は、自転車保険に含まれるほか、火災保険・自動車保険・傷害保険の特約として付いている場合があります。特約の名前や補償される家族の範囲は、保険会社や契約によって異なります。自分では入っていないつもりでも、家族の契約で補償される可能性があるため、保険証券を探し、自分が補償の対象かを契約先に確かめましょう。
一方で、仕事で自転車を使っていた最中の事故は、個人賠償責任保険では補償されません(同協会)。配達や営業の途中で当てた場合は、勤務先にも報告してください。どの契約が使えるかは契約内容によって違うため、契約先に事故の状況を伝え、補償の対象になるかを聞くのが確実です。特約の探し方と、契約先に確かめる項目は「自転車保険は特約で足りる?」でまとめています。
傷と自転車の写真、警察署の名前を記録する
警察への報告が済んだら、後で保険の契約先や持ち主に説明できるよう、現場の状況を記録しておきます。持ち主の許可なく車の中をのぞいたり、ナンバー以外の個人情報を撮影したりする必要はありません。
- 車の傷やへこみのアップと、車全体が写る写真(傷の位置が分かるもの)
- 自転車の当たった部分(ハンドルの端、ペダル、かご、荷台など)の写真
- 駐車していた場所と、自転車が通った向きが分かる周囲の写真
- 連絡した警察署の名前と、対応した警察官の所属・名前、連絡した時刻
- 保険の契約先に伝えた日時と、案内された事故の受付番号
警察に届け出た事故については、自動車安全運転センターで交通事故証明書を申請できます。警察への届出のない事故には証明書が発行されず、物件事故の証明書は事故から3年を過ぎると原則として交付されません(自動車安全運転センター)。保険の手続きで証明書を求められることがあるため、届け出た警察署の名前は控えておきましょう。申請の手順は「自転車事故の交通事故証明書」で扱っています。
当てた側の自転車も点検に出す
車に当たった衝撃は、自転車にもかかっています。ハンドルや前かご、ペダル、ブレーキなどの変形や緩みを確認し、異常があれば乗らずに販売店へ点検を依頼してください。強い衝撃を受けた場合は、見た目や操作感に異常がなくても、走行を再開する前に販売店へ相談しましょう。自分で安全に運べない場合は、運搬方法も相談してください。
CYCLE iのFAQでは、使用による劣化や転倒など、メーカー保証の対象外となる不具合は有償修理と案内しています。同店へ送る場合は往復の運賃や日数がかかるため、近くの自転車店への相談を勧めています。車に当てた自転車も、保証の適用や修理費を販売店へ確かめましょう。個人賠償責任保険は他人への賠償に備えるもので、自分の自転車の修理代は対象ではありません。自分の車体を補償する別の契約があるかは、保険の契約先へ確認してください。
よくある質問
気づかずにその場を離れてしまった場合は、どうすればよいですか?
思い当たった時点で、事故があった場所を受け持つ警察署に連絡してください。いつ、どこで、どの車に当たった可能性があるかを伝え、警察の指示に従います。時間がたってからの連絡になった理由も、そのまま説明しましょう。あわせて保険の契約先にも連絡します。
TSマークの保険で、車の修理代を払えますか?
払えません。TSマーク付帯保険の賠償責任補償は、物損事故を対象にしていません(日本交通管理技術協会「TSマークの概要」)。車の傷の弁償には、個人賠償責任保険など別の契約が必要です。TSマークの種類ごとの補償は「電動自転車のTSマークとは?」で解説しています。
子どもが自転車で車に傷をつけたとき、親の保険は使えますか?
親が契約している個人賠償責任保険や特約で、子どもが補償される人に含まれていれば使える可能性があります。補償される家族の範囲は契約ごとに決まっているため、契約先に子どもの年齢と同居かどうかを伝えて確かめてください。警察への連絡は、子どもだけに任せず保護者が付き添いましょう。
まとめ
自転車で駐車中の車を傷つけたら、持ち主がいなくてもそのまま立ち去らず、警察に連絡してください。道路交通法上の交通事故では、警察への報告が義務づけられ、連絡先のメモを残すだけでは代わりになりません。報告義務に違反すると、3月以下の拘禁刑または5万円以下の罰金の対象になります。
弁償の責任はありますが、金額や支払い方をその場で約束せず、個人賠償責任保険や特約の契約先に先に連絡しましょう。傷と自転車の写真、連絡した警察署の名前を残し、自分の自転車も点検に出してから乗るようにしてください。
参考資料
- e-Gov法令検索「道路交通法」(第2条、第67条第2項、第72条、第117条の5、第119条第1項第17号、第120条第1項第11号。2026年10月15日確認)
- e-Gov法令検索「民法」(第709条。2026年10月15日確認)
- 警察庁「自転車を安全・安心に利用するために-自転車への交通反則通告制度(青切符)の導入-(自転車ルールブック)」(PDF・約19MB)(p.50。2026年10月15日確認)
- 警察庁「自転車の交通ルール」(2026年10月15日確認)
- 日本損害保険協会「個人賠償責任保険」(2026年10月15日確認)
- 日本損害保険協会「自転車事故と保険」(2026年10月15日確認)
- 自動車安全運転センター「申請方法」(交通事故証明書。2026年10月15日確認)
- 日本交通管理技術協会「TSマークの概要」(2026年10月15日確認)
- cycle-i「よくある質問」(2026年10月15日確認)
- パナソニック サイクルテック「サポート」(2026年10月26日確認)
- 日本損害保険協会「知っていますか? 自転車の事故~安全な乗り方と事故への備え~」(PDF)(2026年10月26日確認)
