毎日充電している電動自転車のバッテリーが、発火することはあるのか。発火を含む事故は実際に起きており、全国の製品事故では2021〜2025年の5年間に205件、東京消防庁管内の火災では最近4年間に65件が報告されています。指定の品番のバッテリーと充電器を使い、目の届く場所で充電し、高温の場所や衝撃を避けることで、危険は減らせます。
二つの数字の範囲の違い、非純正バッテリーの事故例、充電中や暑い時期に事故が多い傾向と、日頃の充電・保管で気を付ける点を説明します。
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リチウムイオン電池は内部ショートで発煙・発火する
電動アシスト自転車のバッテリーには、スマートフォンやモバイルバッテリーと同じくリチウムイオン電池が使われています。リチウムイオン電池の内部は可燃性の電解液で満たされており、外部からの衝撃などで正極と負極が電気的につながる「内部ショート」が生じると、発煙や発火につながります(製品評価技術基盤機構〈NITE〉)。
この記事では、NITEに通知された全国の製品事故と、東京消防庁が管内で調査した火災の二つの集計を取り上げます。どちらも電動アシスト自転車の件数を示していますが、集計の対象が違うため、数字の大小だけで比較しないことが大切です。
2021~2025年にNITEへ報告された電動アシスト自転車の製品事故は205件、うち火災130件
2021年から2025年までの5年間にNITEに通知された製品事故情報のうち、リチウムイオン電池搭載製品の事故は2,140件で、そのうち電動アシスト自転車は205件でした(NITE、2026年7月15日公表)。製品別ではモバイルバッテリーの506件に次ぐ件数です。
| 年 | 電動アシスト自転車の事故件数 |
|---|---|
| 2021年 | 38件 |
| 2022年 | 51件 |
| 2023年 | 40件 |
| 2024年 | 43件 |
| 2025年 | 33件 |
被害の状況別に見ると、電動アシスト自転車205件のうち、重傷が1件、軽傷が8件、周囲の製品や建物にまで被害が及んだ拡大被害が100件、製品本体だけの破損が96件で、火災は130件でした。年ごとの件数は30〜50件台で推移しており、この5年間で一方的に増えているわけではありません。
この集計には、消費生活用製品安全法に基づく重大製品事故の報告に加え、事故情報収集制度で集めた非重大製品事故が含まれます。調査中の事故や、原因は特定されていないもののリチウムイオン電池に起因した可能性があると推定される事故も数えられています。
東京消防庁管内の電動アシスト付自転車の火災は、最近4年間で65件
東京消防庁管内で最近4年間に起きたリチウムイオン電池関連火災は957件で、そのうち電動アシスト付自転車は65件(6.8%)でした(東京消防庁「令和8年版 火災の実態(概要版)」)。製品別では、モバイルバッテリー295件、携帯電話106件に次ぐ3番目です。年別の件数の令和4年から令和7年までを足すと957件になるため、この4年間は令和4〜7年を指すと読み取れます。
管内のリチウムイオン電池関連火災は令和7年に397件発生し、最近10年間で最も多くなっています。ここでいう「リチウムイオン電池関連火災」は、電池を搭載した製品から出火した火災で、差込みプラグと器具コードからの出火、ごみ収集車やごみ処理関連施設での火災は除かれています。
電動アシスト付自転車の65件を出火要因別に見ると、次のとおりです。
| 出火要因(東京消防庁の区分) | 電動アシスト付自転車の件数 |
|---|---|
| 製品の欠陥(リコール含む) | 14件 |
| いつも通り使用していたが出火 | 13件 |
| 外部衝撃(落下・外力等) | 7件 |
| 充電方法誤り | 6件 |
| 使用方法誤り | 5件 |
| その他 | 6件 |
| 不明 | 14件 |
「製品の欠陥(リコール含む)」は14件(21.5%)です。利用者の扱い方だけでなく、製品そのものの不具合で出火した例もあります。
NITEと東京消防庁の件数は、集計する地域・期間・事故の種類が異なる
NITEの205件と東京消防庁の65件は、どちらも電動アシスト自転車に関する数字ですが、地域、期間、数え方が異なります。205件と65件を並べて、東京都内が全国のどれだけを占めるかを計算するような比べ方はできません。
| 項目 | NITE | 東京消防庁 |
|---|---|---|
| 地域 | 全国(NITEに通知された事故) | 東京消防庁の管内 |
| 期間 | 2021〜2025年の5年間 | 最近4年間(令和4〜7年と読み取れる) |
| 数えたもの | 製品事故(火災に至らない製品破損やけがを含む) | 消防が扱った火災 |
| 電動アシスト自転車 | 205件(うち火災130件) | 65件 |
NITEの集計は、消費生活用製品安全法に基づく報告や事故情報収集制度で集めた製品事故が対象で、火災に至らなかった事故も含みます。東京消防庁の集計は、同庁が管内で調査した火災をまとめたものです。どちらかの数字を目にしたときは、期間と範囲もあわせて確かめましょう。
非純正バッテリーは避け、車体メーカー指定の品番を選ぶ
2014年から2023年までの10年間にNITEに通知された製品事故情報のうち、「非純正バッテリーによる事故」は235件で、そのうち227件が火災事故でした(NITE、2024年6月27日に消費者庁・経済産業省と同時に注意喚起)。
この235件は電動工具や掃除機などを含む全製品の合計で、電動アシスト自転車は3件です。件数の多くは充電式電動工具(103件)と充電式掃除機(97件)が占めています。また、非純正バッテリーの関与が確認されたものだけでなく、状況から関与が疑われるものも含んでいます。
電動アシスト自転車では、2019年4月に兵庫県で次の事故が起きています。ネット通販で購入した電動アシスト自転車用バッテリーを自転車から取り外して充電していたところ出火し、床を焼損したものです。原因は、非純正バッテリーの内部で短絡が生じて異常発熱し、焼損したものと考えられています。
非純正バッテリーとは、機器本体のメーカーと無関係の事業者が販売し、メーカーが設計や品質管理に一切関与していないものです(NITEの定義)。「互換バッテリー」「純正充電器対応」などと称して安価で売られている例があります。中には、安全保護装置が異常時に作動しない設計のもの、品質管理が不十分なもの、事故後に事業者の対応や補償を受けられないものがあります(NITE)。
交換用バッテリーを選ぶときは、車体メーカーが指定する品番かどうかを確かめましょう。品番の調べ方は「電動自転車バッテリーの互換性」で解説しています。
充電は目の届く場所で行い、外出中や就寝中は避ける
NITEの2021〜2025年の集計では、リチウムイオン電池搭載製品の事故2,140件のうち「充電中」の区分が1,212件でした。この区分には充電後約1時間以内の事故を含み、別に「充電中かつ使用中」が25件あります。非純正バッテリーによる事故235件(2014〜2023年)では、充電中が182件(78%)でした。東京消防庁の最近4年間の集計では、管内のリチウムイオン電池関連火災957件のうち、出火時に充電中だったものが445件(46.5%)でした。
これらは電動アシスト自転車だけの内訳ではありません。対策は、安全な場所で目の届くところで充電し、外出時や就寝時の充電を避けること、周りに可燃物のない場所で充電することです(NITE)。電動アシスト自転車のバッテリーなら、玄関の段ボールや衣類、カーテンの近くに充電器を置かない配置が考えられます。
充電器は指定されたものを使い、出力電圧の異なる充電器はつなぎません(NITE)。差込口の形が同じでも、別の製品の充電器で代用しないでください。延長コードやタップを使う場合の注意は「電動自転車の充電に延長コードを使ってよい?」にまとめています。
暑い時期は置き場所と充電場所を見直す
NITEの2021〜2025年の集計では、リチウムイオン電池搭載製品の事故は春から夏にかけて気温の上昇とともに増え、8月に最も多くなっています。東京消防庁の最近4年間の集計でも、管内のリチウムイオン電池関連火災は7月が105件で最多でした。どちらも全製品の傾向で、電動アシスト自転車に限った月別の数字ではありません。
リチウムイオン電池は高温の環境で異常な反応が起き、発熱・破裂・発火するおそれがあります。直射日光の当たる場所や暑い日の自動車内には放置しないでください(NITE)。夏場は、日差しが当たる窓際や車内にバッテリーを置いたままにしない、直射日光の当たる場所で充電しないといった点を確かめましょう。
パナソニックは、自社のバッテリーを長期保管する際、残量ランプが2〜3個点灯した状態で、15〜25℃の涼しい場所に置くよう案内しています。使用しているバッテリーの保管条件は、その製品の取扱説明書で確認してください。充電の回数や保管の方法を含めた日頃の扱いは「電動自転車のバッテリーを長持ちさせる方法」で解説しています。
落下や強い衝撃のあとは使う前に販売店へ相談する
東京消防庁管内の電動アシスト付自転車の火災65件のうち、7件は「外部衝撃(落下・外力等)」によるものでした。外部からの衝撃で内部ショートが生じると発煙や発火につながるため、落下などの強い衝撃や圧力は加えないようにします(NITE)。
パナソニックは、バッテリーを取り外すときは両手で扱って落下に注意し、取り付けた後は手前に引いて外れないことを確認するよう案内しています。確実に装着されていないと、走行中に脱落して転倒につながるおそれがあります。着脱方法は車体によって異なるため、使用している製品の取扱説明書に従ってください。
ケースが割れたまま使うと、水の浸入により発煙・発火するおそれもあります(パナソニック)。落とした後や車体が倒れた後に、割れ、へこみ、変形が見つかったら、充電せずに購入店や販売店へ相談しましょう。発熱やにおいがある場合の対応は「電動自転車のバッテリーが熱い」で確認してください。
リコール対象かを調べ、該当するバッテリーは使用を中止する
東京消防庁管内の電動アシスト付自転車の火災で、出火要因は、「不明」と並んで「製品の欠陥(リコール含む)」の14件が最も多くなっています。「社告品の電動自転車用バッテリから出火した火災」も起きています(同庁の概要版の写真ページ)。
NITEの2021〜2025年の集計では、リチウムイオン電池搭載製品全体で、リコール対象製品による事故が453件ありました。リコール対象かどうかは、製造・輸入事業者のホームページや消費者庁のリコール情報サイト、NITEの「SAFE-Lite」で確認できます。対象製品を持っている場合は、不具合がなくても直ちに使用を中止して、販売店や事業者に相談してください(NITE)。
告知が出たときにすぐ照合できるよう、購入時に車体とバッテリーのラベルを撮影し、品番を控えておくと便利です。
再生バッテリーや改造したバッテリーは使わない
パナソニックは、再生バッテリーやリサイクルバッテリーの使用、バッテリーの分解・改造を禁止し、発熱・発火のおそれがある「危険」の区分に挙げています。「再生」「セル交換」をうたう製品を自己判断で使わず、車体メーカーが指定する交換用バッテリーを選んでください。
東京消防庁管内では、リチウムイオン電池関連火災957件のうち99件が「分解・廃棄等」によるものでした。電動アシスト付自転車ではこの区分の火災は計上されていませんが、ケースを開けて中を確かめる、端子を加工するといった行為は避けてください。
不要になったバッテリーは放置せず、販売店などに回収を相談する
使わなくなったバッテリーや使えなくなったバッテリーを長期間放置すると、過放電、液もれ、保護機構の破損などにより、破裂・発熱・発煙するおそれがあります(パナソニック)。不要になったら販売店やメーカーに回収を相談してください。膨張・破損・水濡れした電池などはJBRCの回収対象外なので、協力店へそのまま持ち込まず、メーカーや自治体に処分方法を確認しましょう。
買い替えで古いバッテリーが手元に残った場合は、物置や押し入れにしまい込まず、回収先を決めましょう。回収先の探し方は「電動自転車バッテリーの廃棄方法」で紹介しています。
バッテリーの膨らみ・異臭・異常な発熱に気づいたら、充電と使用をやめて相談する
東京消防庁の最近4年間の集計では、管内のリチウムイオン電池関連火災957件のうち、出火前の製品異常が「特になし」だったものが638件(66.7%)でした。出火前の兆候に事前に気づくのは難しいため、少しでも異常があれば使用をやめて、メーカーや販売店に相談しましょう(東京消防庁)。
発火につながるリスクが高くなっている異常には、次のような変化があります(NITE)。
- 充電できない
- 不意に電源が切れる、急に充電残量がなくなる
- 充電中に以前よりも異常に熱くなる
- 膨らんで変形している
- 焦げたにおいや化学薬品のようなにおいがする
- 落とす、ぶつけるなどで強い衝撃を与え、一部が変形や破損している
これらに気づいたら充電と使用をやめ、購入店やメーカーに相談してください。ケースの膨らみを見つけたときの具体的な対応は「電動自転車のバッテリーが膨らんだら?」で解説しています。煙や炎が出ている場合は近づかず、身の安全を確保して119番に通報しましょう。
よくある質問
純正バッテリーなら発火しないのですか?
純正品でも発火しないとはいえません。パナソニックは、自社のバッテリーについても、ケースが破損したまま使うと水の浸入による発煙・発火のおそれがあると注意しています。純正品を使う場合も、取扱説明書に従い、リコール情報や充電場所を確認してください。東京消防庁の集計には純正品と非純正品の内訳がないため、その数字から純正品の火災件数や発生率は分かりません。
電動自転車のバッテリーを寝ている間に充電してもよいですか?
避けてください。リチウムイオン電池搭載製品は、異常にすぐ対処できるよう、外出時や就寝時の充電を避けるのが基本です(NITE)。充電時間の目安はバッテリーと充電器の組み合わせで異なるため、取扱説明書で確かめ、起きている時間に充電が終わるよう始める時刻を調整してください。
まとめ
NITEに通知された電動アシスト自転車の製品事故は、2021〜2025年の5年間に205件あり、このうち火災は130件でした。一方、東京消防庁の集計では、管内の最近4年間の電動アシスト付自転車の火災は65件です。期間・地域・集計対象が異なるため、二つの数字を直接比較しないようにしましょう。
非純正バッテリーでは、2019年4月に兵庫県で充電中に出火し床を焼損した事故が起きています。指定品番のバッテリーと指定の充電器を使い、目の届く場所で充電し、高温の場所に放置しない、落下させない、リコール情報を確かめる、不要なバッテリーをため込まないといった点を日頃から意識してください。
参考資料
- 製品評価技術基盤機構「『夏バテ(夏のバッテリー)』にご注意を~『リチウムイオン電池搭載製品』は3つのCで事故を防ぎましょう!~」(PDF)(2026年7月15日発表。p.2 構造、p.4 月別、p.6〜10 事故を防ぐポイント、別紙1 表1〜3。2026年10月15日確認)
- 製品評価技術基盤機構「『低価格・高リスク』の非純正バッテリーに注意~建物が全焼に至った火災も~」(PDF)(2024年6月27日発表。p.2 定義、p.3 表1、p.4 使用状況・事例①。2026年10月15日確認)
- 東京消防庁「令和8年版 火災の実態(概要版)」(トピックス p.4〜6 リチウムイオン電池関連火災の状況・表2〜4、写真ページ。2026年10月15日確認)
- パナソニック サイクルテック「安心・安全のために」(バッテリーの項。2026年10月15日確認)
- JBRC「協力店・協力自治体検索」(2026年10月26日確認)
