二輪または三輪の自転車から降り、押して歩いている人は、道路交通法上は原則として歩行者とみなされます。歩道が混んでいるとき、自転車に乗ったままでは通りにくいとき、横断歩道を歩行者として渡りたいときは、安全な場所で降車してから押し歩きへ切り替えます。
ただし、どんな自転車でも押せば歩行者になるわけではありません。道路交通法は、側車付きのものと、他の車両をけん引しているものを例外としています。また、法令上は歩行者として扱われる場面でも、子どもを幼児用座席に乗せたまま押すときは車体が重く不安定になるため、扱い方には別の注意が要ります。
「降車した」だけでなく、乗車状態を完全に解く
サドルから降り、ペダルに足を置かず、自転車の横に立って歩く状態に切り替えてください。
押して歩く二輪・三輪の自転車は原則として歩行者扱い
道路交通法第2条第3項は、二輪または三輪の自転車を押して歩いている者を、歩行者とみなす対象に含めています。一般的なシティサイクル、子ども乗せ自転車、基準に適合する電動アシスト自転車も、二輪または三輪の自転車であることが出発点です。
乗って走る間の自転車は軽車両であり、歩行者ではありません。歩道に入る直前に片足を地面に付けただけや、サドルにまたがったまま足で進む状態は、「押して歩く」とは異なります。車道や歩道の通行ルールを切り替えるなら、先に完全に降車します。
歩行者とみなされない例外がある
| 押している状態 | 歩行者扱い | 確認点 |
|---|---|---|
| 一般的な二輪・三輪自転車を一人で押す | 原則として歩行者 | 完全に降車して横で歩く |
| 側車付きの車両を押す | 例外 | 通常の自転車と同じと考えない |
| 他の車両をけん引したまま押す | 例外 | トレーラー等を連結した状態を解く |
条文が例外として挙げているのは、側車付きのものと、他の車両をけん引しているものの2つです(道路交通法第2条第3項第2号)。警察庁の交通安全教育ガイドラインも、同じ2つを除いて「押して歩く場合は、歩行者とみなされます」と説明しています。けん引物があるときは、安全な場所で連結を解いてから歩道へ入ってください。
子どもを乗せたまま押すときは車体を支えきれるかを先に考える
条文の例外に、子どもを乗せている場合は含まれていません。ただし、法令上の扱いと安全に押せるかどうかは別の問題です。子乗せ電動自転車は車体だけで30kg前後のものが多く、そこへ子どもの体重が加わるため、片手でハンドルを持って押すと、段差や傾斜で車体が傾いたときに支えきれないことがあります。
歩道を長く押す、人の多い場所を通る、段差や斜面を越えるといった場面では、子どもを降ろして手をつなぎ、自転車だけを押すほうが安全です。短い距離を乗せたまま押す場合も、両手でハンドルを持ち、子どものベルトを締めたままにしてください。
子どもを降ろすときは、自転車のスタンドを確実に掛け、車体を支えながら一人ずつ乗せ降ろしします。車道と歩道の境目、斜面、通行人の多い場所では作業せず、平らで十分な幅のある場所まで移動しましょう。
乗って走るときの車道・歩道・交差点のルールは、別記事で整理しています。
歩道では自転車を歩行者にぶつけない
歩行者とみなされる状態では、歩道を歩行者として通行できます。しかし、自転車のハンドル、ペダル、カゴは身体より外側へ張り出します。歩行者の間を無理に通り抜けたり、自転車で相手に進路を譲らせたりしないでください。
すれ違う幅がないときは、広い場所で先に立ち止まり、歩行者を通します。建物の出入口、駐車場出口、視界の悪い曲がり角では、自転車の先端を先に飛び出させず、一度止まって左右を確認します。
横断歩道は降車してから歩行者として渡る
横断歩道は歩行者が横断する場所です。自転車に乗ったまま横断する場合には車両としてのルールが関係し、横断中の歩行者を妨げるおそれがあるときは乗ったまま通行できません。降車して押し歩きに切り替えれば、歩行者として横断歩道を渡れます。
横断歩道の手前で急に自転車を横向きにすると、後方の自転車や歩行者の進路を塞ぎます。横断待ちの列に入る前に速度を落とし、周囲を確認してから降車します。信号がある場所では歩行者用信号に従い、点滅中に無理に渡り始めないでください。
自転車横断帯があるときは乗車中と押し歩きを分ける
自転車に乗って道路を横断するとき、近くに自転車横断帯があれば、車両としてそこを通行するルールがあります。一方、完全に降車して自転車を押しているなら、歩行者としての扱いです。
交差点の直前で、都合のよい信号だけを選ぶために乗車と押し歩きを繰り返すのは危険です。どちらの状態で渡るかを手前で決め、歩行者と自転車の導線を急に横切らないようにします。
踏切では押し歩きでも必ず安全確認する
乗車中の自転車は、踏切の直前で一時停止し、安全を確かめて通行する必要があります。降車して歩行者に切り替えたからといって、警報機や遮断機を無視できるわけではありません。
線路の溝にタイヤが入らない角度で横断し、段差でハンドルを取られないよう両手で支えます。前の人が渡れても、自転車を含む自分の全長が踏切の外へ出られる時間がなければ、次の機会を待ってください。
電動アシスト自転車も車両区分を先に確認する
国家公安委員会規則の基準に適合する電動アシスト自転車は、道路交通法上の自転車です。その車体を降りて押す場合は、前述の二輪・三輪自転車の条件で考えます。
ペダルをこがずにモーターだけで走れる車体や、基準を超えるアシストが働く車体を、名称だけで電動アシスト自転車と判断してはいけません。車両区分が異なればルールも変わるため、型式と仕様を確認しましょう。
電動アシスト自転車の押し歩き機能の仕組みと操作は、別記事で扱っています。
押し歩き機能の有無だけで歩行者扱いは決まらない
一部の電動アシスト自転車には、降車中にモーターが押す力を補う機能があります。これは重い車体を坂道などで動かすための装備であり、歩行者とみなされる法令上の条件そのものではありません。
搭載の有無、作動条件、操作の順番は車種ごとに異なります。機能を使うときは取扱説明書に従い、ボタンを離したら止まれる速度と姿勢で操作します。詳細は電動自転車の押し歩き機能で確認できます。
安全に押し歩きする手順
- 後方を確認し、交通の流れを塞がない平らな場所で停止する
- 両足を地面に付け、自転車から完全に降りる
- ハンドルとブレーキをすぐ操作できる側に立つ
- ペダル、荷物、スタンドなどが人や路面に接触しないか見る
- 歩行者と同じ速度まで落とし、狭い場所では立ち止まって譲る
電動自転車や子ども乗せ自転車は車重があり、傾き始めてから腕だけで戻すのは困難です。下り坂では車体を身体の前へ先行させず、ブレーキを使える状態で小さな歩幅で進みます。
狭い通路で無理に押し続けない
降車すれば必ず安全とは限りません。車体を含む幅が確保できない歩道、急な階段、自転車用スロープのない段差では、押し歩きそのもが危険になります。引き返して幅のある経路を選ぶ、駐輪して歩くなど、車体を持ち込まない方法も検討します。
通行を管理する施設が「自転車は降りて通行」「自転車の持込み不可」などの案内を設けている場合は、現地の表示と管理者の案内を確認してください。歩行者扱いと、施設内に持ち込めるかどうかは別の問題です。
よくある質問
自転車を押して歩道を歩けますか?
二輪または三輪の自転車から完全に降り、一人で押して歩くなど法律上の条件を満たせば、歩行者とみなされて歩道を通行できます。歩行者を妨げない幅と速度で進みましょう。
子どもを座席に乗せたまま押すと歩行者ですか?
道路交通法第2条第3項第2号が定める例外は、側車付きのものと他の車両をけん引しているものだけで、子どもを乗せている場合は例外に含まれていません。ただし、子どもを乗せた車体は重く、傾いたときに支えきれないおそれがあります。人の多い場所や段差のある場所では、子どもを降ろしてから押してください。
自転車を押して横断歩道を渡るときはどの信号を見ますか?
歩行者とみなされる状態で横断歩道を渡るなら、歩行者用信号に従います。乗ったまま横断する場合とは扱いが異なるため、交差点の手前でどちらの状態にするか決めます。
まとめ
二輪または三輪の自転車を押して歩く人は、歩行者とみなされます。例外は、側車付きのものと、他の車両をけん引しているものです。子どもを乗せたまま押すことは条文上の例外ではありませんが、車体が重く不安定になるため、人の多い場所や段差では子どもを降ろしてから押すのが安全です。
歩道や横断歩道では、安全な場所で完全に降車し、自転車を身体の横で支え、歩行者と同じ速度で進みます。「歩行者とみなされる」ことを優先権のように考えず、自転車の幅と重さまで含めて周囲に配慮しましょう。
参考資料
- e-Gov法令検索「道路交通法」(2026年10月5日確認)
- 警視庁「自転車の交通ルール」(2026年10月5日確認)
- 警察庁「自転車の交通ルール|自転車ポータルサイト」(2026年10月5日確認)
- 警察庁「自転車の交通安全教育ガイドライン」(PDF、2026年10月5日確認)
