自転車で前を走る自転車を追い越すときは、後方と対向車を確認し、原則として相手の右側を通過します。ただし、見通しの悪い場所や、右へ出るだけの安全な間隔がない場所では待つ必要があります。
自動車に追い抜かれる場面では、2026年4月1日施行の側方通過に関する規定も関係します。数字だけを独り歩きさせず、追い越す側と追い越される側に求められる行動を場面ごとに確認しましょう。
追越しを急がず、安全な間隔を取れる場所まで待ちましょう
後方、対向車、道路標示、前方の障害物を確認し、狭い場所では無理に横へ並ばないでください。
道路交通法の「追越し」は進路変更を伴う
道路交通法第2条では、追越しを、車両がほかの車両に追い付いた場合に進路を変え、その側方を通過して前方へ出ることと定義しています。自転車も軽車両であり、車両同士の追越しに関する規定の対象です。
日常会話の「追い抜く」は広い意味で使われますが、法令では、進路変更を伴う追越しと、進路を変えずに右側を通過する場面が区別されることがあります。呼び名だけで判断せず、実際の動きと道路状況を確認することが大切です。
自転車同士の追越しは原則として右側から行う
道路交通法第28条は、車両を追い越すとき、原則として前の車両の右側を通行するよう定めています。自転車で前方の自転車を追い越す場合も、左側の狭い隙間へ入り込むのではなく、右側から安全に通過するのが基本です。
右側から通過できるという意味は、いつでも追越してよいということではありません。後方から自動車が来ている、対向車線へはみ出す、交差点が近い、前の自転車が障害物を避けそうな場面では追越しを見送ります。
追い越し前は前車・後続車・対向車と戻る路肩を確認する
| 確認方向 | 見る対象 | 起こり得る動き |
|---|---|---|
| 前方 | 交差点、駐車車両、歩行者、路面 | 前車が右へ避ける、急停止する |
| 後方 | 自動車、二輪車、速い自転車 | 自分を追い越そうと接近する |
| 右側 | 対向車、中央線、車線境界 | 通過空間がなくなる |
| 左側 | 縁石、側溝、路肩 | 戻る場所が狭くなる |
一度の後方確認だけでは、接近する車両との速度差を判断しにくい場合があります。首を大きく振ってふらつく人は、安全な場所で停止して後方を確認し、無理な追越しを避けてください。
追越しを始める前に十分な間隔を取る
前の自転車へ近づきすぎてから右へ出ると、相手が減速した際に対応できません。追越しを決める前に車間を保ち、後方と前方を確認する時間を作ります。
通過中はハンドル、荷物、傘、チャイルドシートなど車体から張り出す部分も考慮します。相手が少しふらついても接触しない側方間隔を確保できなければ、道幅の広い場所まで後ろを走りましょう。
追越しが禁止される場所を確認する
道路交通法第30条は、標識で追越しが禁止されている場所のほか、道路の曲がり角付近、上り坂の頂上付近や急な下り坂、一定のトンネル、交差点・踏切・横断歩道・自転車横断帯とその手前などを追越し禁止場所として定めています。
ただし、同条が対象にしているのは「他の車両(特定小型原動機付自転車等を除く。)」を追い越す場合です。特定小型原動機付自転車等には自転車などの軽車両が含まれるため、自転車が自動車や一般原動機付自転車を追い越すときは同条の規制を受けますが、前を走る自転車を追い越すときは同条の対象外です。
対象外であっても、追越しが安全という意味ではありません。道路の右側部分へはみ出して追い越せるのは、第17条第5項第4号により、右側部分を見通すことができ、反対方向の交通を妨げるおそれがない場合などに限られます。
見通しが悪い場所では、禁止標識が見当たらなくても対向車や歩行者への対応が遅れます。「前の自転車が遅い」という理由で安全確認を省かず、見通しの悪い区間を抜けて視界と道幅が確保されるまで待ちます。
中央線を越える前に標示と対向車を見る
狭い道路で右側から追い越すと、中央線へ近づいたり、道路の右側部分へはみ出したりすることがあります。道路標示によって追越しのための右側部分へのはみ出しが禁止されている場所では、その標示に従います。
はみ出しが認められる条件でも、対向車の進行を妨げてよいわけではありません。追越しを完了して安全に左側へ戻れる距離が見通せない場合は、前車との間隔を保って走行してください。
駐車車両の横ではドアと発進に備える
停止している駐車車両の横を通る場面は、走行中の車両を追い越す場合とは状況が異なります。それでも、運転席や後部座席のドアが開く、車両が発進する、車の陰から歩行者が出る危険があります。
直前で急に右へ膨らまず、早めに後方を確認します。十分な間隔を取れないときや、後方車と同時に横を通る形になるときは停止して待ちます。駐車車両を避けた後も、すぐ左端へ切り込まず、路面と後方を確認して戻りましょう。
歩道では歩行者の通行を最優先する
普通自転車が例外的に歩道を通行できる場合でも、歩道は歩行者優先です。車道寄りの部分を徐行し、歩行者の通行を妨げるときは一時停止しなければなりません。
ベルを鳴らして歩行者へ道を空けさせたり、狭い隙間を速度を保ったまま通過したりしないでください。安全に通れない場合は、自転車から降りて押し歩きに切り替えます。
自動車に追い抜かれるときの側方通過ルール
2026年4月1日から、自動車などが進路を変えずに自転車などの右側を通過する際(追越しの場合を除く)、両者の間に十分な間隔がない場合の通行方法が施行されました。道路交通法第18条第3項により、自動車などは間隔に応じた安全な速度で進行する必要があります。
同条第4項では、この状況で自転車などが、できる限り道路の左側端に寄って通行することを定めています。追い越されそうになってから急に左へ動くのではなく、路面状況を確認しながら安定した進路を保つことが重要です。
1m・時速20〜30kmは状況を問わず使える安全基準ではない
警察庁は、自動車が自転車の右側を通過するときはできる限り間隔を空け、少なくとも1m程度空けることが安全と案内しています。また、1m程度を確保できない場合は、自動車が時速20〜30km程度で運転することを目安として示しています。
これらは、道路、交通、走行状況にかかわらず適用する一律の境界値ではありません。警察庁も「十分な間隔」と「安全な速度」は具体的な状況により異なると説明しています。1m未満なら常に同じ速度でよい、1mあれば減速不要という意味ではありません。
追い越される側も急な進路変更を避ける
後方から車が近づいたときは、前方の側溝、段差、落下物、駐車車両を確認します。左端へ寄る余地があっても、深い側溝や荒れた路肩へ入ることまで求められていると考えず、安全に走れる範囲で進路を保ちます。
車の音に驚いて急ブレーキを掛けたり、歩道へ飛び乗ったりすると、後続車が動きを予測できません。進路変更が必要なら後方を確認し、早めに合図を行い、安全な場所で待つ判断も必要です。
前の自転車から追い越される場合は競わない
後ろの自転車が追越しを始めたら、速度を上げて並走状態を長引かせないでください。自分の進路を安定させ、前方の障害物を避ける必要があるときは、急に動かず減速して状況を整えます。
声やベルで合図された場合も、驚いて急に左へ寄らず、路面を確認します。相手の追越し方法が危険でも、張り合ったり進路を塞いだりせず、自分が安全に停止できる位置を探してください。
電動アシスト自転車は加速の差を見込む
電動アシスト自転車は、発進や上り坂で前車との速度差が生じやすい場合があります。追い付いた直後に追越しを始めず、前方の坂、交差点、駐車車両を見て、安全に完了できる区間かを判断します。
アシストによって速度を上げられても、道幅や制動距離が広がるわけではありません。子どもや荷物を載せた車体では幅と重量も増えるため、短い隙間へ入らず、必要ならアシストモードを下げて前車との距離を保ちましょう。
追越しを中止する判断を先に決める
- 後方車が近づいている
- 対向車が見える、または見通せない
- 交差点、横断歩道、踏切が近い
- 前車が駐車車両や段差を避けようとしている
- 並んだ状態で安全な間隔を確保できない
- 追越し後に左側へ戻る空間がない
一つでも当てはまる場合は、追越しを始めないことが基本です。途中で危険に気付いたときも、無理に加速して前へ出ず、後方を確認しながら減速して元の位置へ戻ります。
よくある質問
自転車で前の自転車を左側から追い越してもよいですか?
車両を追い越す場合は、原則として右側を通行します。左側の縁石との隙間へ入り込まず、安全な右側間隔を確保できないときは待ってください。
自動車に追い抜かれるときは必ず左端へ寄るのですか?
十分な間隔がない側方通過では、できる限り道路の左側端に寄って通行する規定があります。ただし、側溝、段差、障害物へ急に近づかず、安全に走れる進路を保ってください。
自転車同士なら追越し禁止場所でも追い越せますか?
道路交通法第30条の追越し禁止場所の規定は、追い越す相手が自転車の場合は対象外です。ただし、道路の右側部分へのはみ出しには第17条の制限があり、曲がり角や交差点の付近は見通しが悪く危険です。安全な間隔と見通しを確保できない場合は追越しを見送ってください。
まとめ
自転車でほかの自転車を追い越す場合は、原則として右側から通過します。後方車、対向車、見通し、道路標示、前車の動きを確認し、安全な側方間隔と追越し後に戻る空間を確保できなければ待ちましょう。
2026年4月1日施行の側方通過規定では、十分な間隔がないときの自動車側の安全な速度と、自転車側のできる限り左側端に沿った通行が定められました。警察庁が示す距離と速度は安全上の目安です。数字だけで可否を決めず、その場の道路・交通状況に応じて危険を避けてください。
参考資料
- e-Gov法令検索「道路交通法」(2026年10月6日確認)
- 警察庁「自転車ポータルサイト よくある質問」(2026年10月6日確認)
- 警察庁「自動車等が自転車等の右側を通過する場合の通行方法」(PDF)(2026年10月6日確認)
- 警察庁「道路交通法等の改正」(2026年10月6日確認)
- 警視庁「自転車の交通ルール」(2026年10月6日確認)
